皆さんは人々がこれほどまでに音楽が好きな理由を考えてみたことはありますか?一般的に、人が音楽を好きな理由はリズムやサウンドが良く、心地よい気分になれるからです。

では、なぜ音楽には人を快適な気分にさせてくれる力があるのでしょう?音楽を聴く人々に関する研究を行ったカナダの科学者たちは、快い音楽が大脳辺縁系と呼ばれる、陶酔感に対して報酬反応を引き起こす脳の部位を活性化することを明らかにしました。

この反応は、おいしい食事や気持ちのいいセックス、あるいはドラッグを打った時の状態と似たもので、ドーパミンと呼ばれる神経伝達物質によってもたらされます。

音楽に隠された秘密とは?

食事やセックスによってドーパミンが大量に放出されると、それらに対する欲求がさらに高まるというのは、生物としての繁殖や生存につながるものであることを考えると自然の摂理とも言えます。しかしなぜ音楽に同様の効果があるのか、その答えはまだわかっていません。

一方、なぜ音楽がそのような強い感情を引き起こすのかについては、多くの手がかりが見つかっています。現在の理論が確立されたのは1956年のことで、音楽によって沸き起こる感情の全ては私たちの期待と、それを手に入れられるか否かに関わっているというものです。

たとえば、私たちは自分の願いが叶わないと怒りや不満を感じますが、愛すべき何かを見つけた途端に、そのフィーリングはとても甘美なものになります。音楽にもそれと同じような効果があるという理論に多くの科学者が同意しています。

音楽は音波の規則性やパターンを作り出します。音楽を聴くとワクワクした気持ちになるのは、私たちが曲の流れを無意識に予測しているからです。予測があたれば、音楽はドーパミンの急増という形で私たちに報酬を与えてくれます。この期待と結果の継続的な絡み合いによって私たちの脳が活性化し、喜びという感情が沸き起こるのです。

では人が曲の流れを予測し、それが正しいか否かを気にすべき理由はなんでしょうか?それによって人生が変わるわけでもありません。しかし、人が自分の周囲の環境について予測を行う時には、目で見たり耳で聴いたことをもとに解釈を行うもので、そういう意味では音楽が私たちの感情に直接的な影響を与えていると言えるかもしれません。

皆さんにも耳にすると必ず涙が出てくるような歌や映画のサウンドトラックがあると思います。何度も涙を流した方もおられるでしょう。頭では苦笑いをしてしまいたい気分になるかもしれませんが、人は音楽を聴かずにはいられないのです。

感情のスイッチを切ることが不可能なように、音楽を完全に止めてしまうことはできません。言うなれば、音楽は人生の一部なのです。

信憑性

音楽的な感情は、人が期待するであろう詩や曲に少し手を加えたり、意外性を加えたりする試みから生まれるというのが、どうやら現時点で最も信憑性の高い理論であるようです。しかしそれを証明するのはかなり困難です。音楽にはあまりにも多様な編曲や意外性を加える可能性があり、実際にそれぞれの曲を比較する方法や計測する方法なども明確ではありません。しかしひとつ確かなことは、音楽がなければ現代社会は味のない場所になってしまうということです。